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2013.11.6
メディア掲載情報:『教育新聞』でCoNETS発足についての記事が掲載されました。

『教育新聞』でCoNETS発足についての記事が掲載されました。

出典:株式会社 教育新聞社 『教育新聞』 10月17日 第3231号 情報教育特集

今年3月1日現在で、全公立学校の指導者用デジタル教科書の整備率は32.5%。前年比9.9ポイント増だが、より使い勝手のよいものを求める声がある。文科省は来年度の概算要求に「新しい日本のための優先課題推進枠」に位置づけ、新規に「情報通信技術を活用した新たな学びの推進事業」21億円を計上した。ICTを活用した授業革新や指導方法の開発が目指されるが、今後のデジタル教科書のあり方や操作性、ビューアなどの問題について、文科省学びのイノベーション推進協議会小中学校ワーキンググループ(主査・東原義訓信州大学教授)の委員なども務めている加藤直樹東京学芸大学教育実践研究支援センター准教授に聞いた――。

――現在の指導者用デジタル教科書について、学習指導上で優れている点と、課題や使いにくさとして挙げられる点は。
選択表示や拡大、情感が伝わる朗読、マーカーや書き込みなどが重宝されています。分度器やコンパスなどのデジタル文房具を使い、試しながら考えたり、仲間と学び合ったりする機能も便利です。児童生徒が、示されている学習内容に注視しているのを確認しながら授業が進められるのもいいです。これらによって意欲や関心を引き出し、学びを深めています。
一方、ある出版社のデジタル教科書を利用するときには、現状はその社のアプリケーションソフトウェアを立ち上げています。そのため、教科によって操作性が異なってしまいます。電子黒板ソフトウェアやその他の授業支援ソフトウェアと機能がだぶっているのも、使い慣れていない教員に説明し、使いこなしてもらうのは結構大変だと思います。タッチパネル方式なのにファイル保存ではキーボードによる文字入力が必要など、ユーザーインターフェースのデザインが、まだまだしっくりきていないことも問題です。

――最近話題の学習者用デジタル教科書について、文科省での議論や見通しは。
学びのイノベーション推進協議会では「21世紀にふさわしい学びの環境とそれに基づく学びの姿」として、デジタル教科書・教材を▽基本エンジン▽ビューア▽コンテンツ・プログラムと階層化して捉えた図を例示しました。そして先日、さらに具体的な方向性として、ビューアとコンテンツは独立させ、出版社やOSの違いによる操作性の統一化を図り、どの出版社のコンテンツも情報端末やOSに依存しないビューアを使って利用できるようにしようというものを示しました。

――ビューアが1つになるという意味か。
違います。各出版社は、デジタル教科書のコンテンツの見せ方などにこだわっています。考えてみれば、ビューアが1つに統一されてしまうと、競争に基づく技術革新も生まれなくなります。ビューアは多様にあってよいのです。それぞれのOSの特長を生かすためにはビューアのマルチプラットフォーム化にこだわる必要もないかもしれません。
でも、同じ地域や同じ学校内では同一のビューアを備えることで、デジタル教科書の使い方を統一できるようにしておくべきです。そして、どのビューアでもどの出版社のコンテンツを扱えることが重要です。つまりコンテンツはマルチプラットフォームにすべきということです。このためには、コンテンツの規格を統一することが必要になります。電子書籍の標準規格の1つであるEPUBなどが参考になるでしょう。
現在、複数のデジタル教科書出版社でCoNETS(コネッツ)というコンソーシアムをつくり、ビューアを共同開発する動きもでてきました。文科省もデジタル教科書等の標準化に向けた事業を開始しています。ある出版社のコンテンツだけに対応したビューアを流通させてしまうと、現状の指導者用デジタル教科書の問題を引きずることになってしまい、状況は混迷します。ビューアの機能や使いやすさ、学習を助けるコンテンツの発展のためにも、それぞれを得意とする各社の創意工夫が重要であり、そのためにも、コンテンツとビューアを切り離して考えた方がよいでしょう。CoNETSも切り離して考えています。

――学習ツールとしての課題は。
指導者用デジタル教科書の次は、学習者用デジタル教科書の提供が考えられています。その際、学習者が学習成果を表現したり、協働学習のために活用したりするアプリケーションも必要です。これらはデジタル教科書と一緒に授業で利用するはずですから、デジタル教科書の内容をアプリケーションにコピーする仕組みがあると学習方法の幅が広がるはずです。また教育利用だとしても、サーバとのやりとりやクラウドでデジタル教科書を家庭のパソコンで見て学習したりすることを考えた場合の著作権や、個人情報の取り扱いも考えていかなければなりません。これらの問題への対応について様々な分野の専門家が加わり、1つ1つ検討し、課題を解決していくことが大事と考えています。
デジタル教科書に求められる機能の整理やルールの策定が進めば、デジタル教科書はより使い勝手のよいものになるでしょう。

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