メディア掲載情報:『日本教育新聞』でCoNETS発足についての記事が掲載されました。
『日本教育新聞』でCoNETS発足についての記事が掲載されました。
出典:株式会社日本教育新聞社 『日本教育新聞』 10月14日 第5939号 ICT教育特集
デジタル教科書普及へのシナリオ
1人1台端末の導入が拡大
子ども1人1台端末の導入に向けた動きが加速してきた。全校での採用を決めた自治体のほか、数年後の導入を目指した試験運用を始める事例もある。今後の普及への課題について、メディア政策に詳しい中村伊知哉氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授、デジタル教科書教材協議会副会長)に聞いた。
教科書会社コンソーシアム
「CoNETS」が発足
自治体主導で具体化
2010年度から子ども1人1台端末の活用に関する検証を行ってきた佐賀県武雄市は、来年度から全ての市立小学校の子どもたちにタブレット端末を配布すると発表した。
大阪市と東京都荒川区でも、今年度から一部の学校でモデル導入し、運用方法や学習効果の検証を始めた。いずれも2014年度以降に全校への導入を目指す。
これまで1人1台端末の導入に向けた動きは、総務省のフューチャースクール実証実験など政府主導で進んできた。
「ここへきて取り組みの主体が政府から自治体レベルに移り、域内全校での導入決定や、数年以内の実現を目指す具体的な動きが増えてきた。場面が転換したと捉えている」と中村氏は言う。
デジタル教科書教材協議会は昨年6月、「2015年までに1000万人の子どもたちにデジタル教科書が整備できる」ことを目標に、制度改正や端末配布を含めた環境整備を求める政策提言を発表した。提言には「50の自治体首長が賛同」(中村氏)しており、地域単位の取り組みは今後も拡大すると見られる。
関連法の改正が急務
〝場面転換〟を象徴するもう一つの動きが、教科書会社の連携だ。9月5日、大手教科書会社など13社が参画するコンソーシアム組織「CoNETS(コネッツ)」が発足した。
1人1台端末普及を見据え、指導者用と学習者用デジタル教科書の開発で連携する組織で、「異なるOSへの対応」「操作性の統一」「学習情報を共有する機能の搭載」などにより、「デジタル教科書のスタンダード」を目指すとしている。
「教育コンテンツの本丸がいよいよ動き出したという印象。各社が持つ教科書編集のノウハウにデジタルの利点が加わることで、より質の高いデジタル教科書の提供が期待できる」(中村氏)。
さまざまな端末で同じように操作できる教科書は、教員や子どもたちとしても使いやすい。端末やデジタル教科書の普及と、授業での活用を後押しする力になりそうだ。
さらに中村氏は、CoNETSが採用する共通プラットフォームが国際標準規格をベースにしていることから、「日本の教科書という優れた教育コンテンツの海外展開にも生かしてほしい」と期待を寄せる。
一方、今後の普及に向けては、コスト、関連法改正、教育効果の実証研究、デジタル端末の利用を不安視する保護者や子どもたちへの対応といった課題もある。
最も大きいのは、教育基本法や著作権法など関連法の改正だ。現行制度ではデジタル教科書は正規の教科書ではなく、補助教材という位置付け。義務教育教科書を対象とする国の補助や、著作権法の特例の適用外となっていることが、教科書制作や導入コストの問題につながっている。
この点について、政府の知的財産戦略本部が6月に取りまとめた「知的財産推進計画2013」では、デジタル教科書の位置付けや制度上の課題を検討し、「必要な措置を講じる」と記述している。中村氏は、「これまでに比べると踏み込んだ表現。今後1、2年での法改正実現を望みたい」と話す。
当初は1人1台端末とネット環境の整備、活用が先行。その後の制度改正によりデジタル教科書の導入が進み、紙の教科書と共存する時期が来ると中村氏。「国への働きかけの一方で、自治体や学校現場とも連携しながら、私たち民間レベルで動ける部分は先に動いていきたい」としている。
慶應義塾大学 中村 伊知哉 教授